死が二人を分かつとも
「ぶはっ、件名弥代くんだってさ。なんかウケる!マジでつき合ってんのな、お前ら。ええと、弥代くんに通話したいと思いまーす」
彼を呼び出して何をする気だとは、聞かなくても分かる。だからこそ、八人も集めて来たのだから。
私のスマフォを耳に当て、ニヤニヤとこちらの様子を伺いながらいた岸谷くんだったがーーコール音とは別に聞こえた着信音で、笑みが消えた。
その場の空気が固まる。
誰かが、「嘘だろ」と公園の入り口を見ていた。
「岸谷だっけ、そよ香のクラスの。話したいことあるなら早く言え。お前との電話切ったあと、警察にでも連絡するから」
通話が要らない距離でも、わざわざ鳴った携帯電話を耳に当てる弥代くんが、そこにいた。
「は?なんで?真奈たちがお前と話すって……」
「なんでそよ香をいじめる奴と話さなきゃならないんだ。というか、邪魔だお前ら。暑苦しいくて、臭いんだよ。そよ香に匂いが移るだろ」
呆然とする岸谷くんからスマフォを取り返し、私に帰ろうと言う彼。
男子の一人が、今の罵倒に殴りかかっても良さそうな雰囲気だったが。
「殴りたいならやれ。やられたなら、遠慮なくやれるしな。お前が先なら、後からやる俺は正当防衛だ。堂々と、お前の鼻を折れる」
彼に手出しするのが躊躇われた。
「なんだ、やらないのか。なら、次は女子高生一人が、何人もの男に絡まれているって連絡していいな」
110を淡々とした様子で押す弥代くんの姿に、さすがにまずいと悟ったか男子たちがざわつき始める。
「お、おい、岸谷!」
「分かってるって!ーーなに、お前。欲求不満なの?俺らは単に春野とカラオケ行こーってな話をしていただけー。女一に男数人とかで、エロいことでも期待しちゃった?」
「残念だったな。俺に冗談は通じない。全部、本気で取るし、それ相応の現実的対応をさせてもらう。怖がる女一人を、何人もの男が取り囲んでいる。これを言って、どう出るかはあちら次第。あっちも、冗談とは受け取らないだろう」
繋がる電話。どうしましたか、と男性の声。弥代くんが話そうとした途端、岸谷くんが有無を言わさず彼の携帯電話を奪い取る。