死が二人を分かつとも

「からかっているだけだって、言ってんだろうが!俺らだって将来あんだよ!問題なることはしねーって!」

通話を切り、弥代くんに携帯電話が投げ返された。

「つまんねーな、ノリ悪い!真奈たちが春野に、なんかしてやりてーって言うから遊んでただけなのによぅ。しらけたわ、帰ろうぜ。ったく、冗談だってのに。真に受けんなよなー」

やってられないと、ぞろぞろ帰る彼らは、私が思ったようなことはしないらしい。

私を怖がらせるために。そう言った彼は、女子全員の願いを遊びとして叶えようとした。

弥代くんと付き合う私が気にくわない。だからこそ、報いを受けろとーー

「そうか。なら、俺もお前ら見習って冗談を言う」

あ?と機嫌悪そうに振り返る岸谷くんに、弥代くんは言う。

「今度、そよ香に何かしてみろ。お前らの家、燃やすから」

聞いた者を、顔面蒼白にする“冗談”とやらを。

「冗談だ。真に受けんなよ。白ける」

「ーーってめえぇ!」

殴りかかってくる岸谷くんを、別の男子が羽交い締めにして止めた。「マジ問題起こしてどうするっ」と、手綱を引かれ、ようやっと岸谷くんが拳を解いた。

忌々しく唾を吐き、背を向ける。
彼らの姿が見えなくなるまで、弥代くんはその背から目を離さなかった。

「そよ香、今度から必ず一緒に帰るぞ」

「う、うん」

「あと、何かあったらいつでも連絡出来るように携帯だけは手放すな。さっきみたく奪われることもあるから、首にでも下げておいた方がいい」

「そ、そんなに心配しなくても」

「何かあってからじゃ遅い。本当は、学校に来てほしくないぐらいだ」

突拍子もない話しでも、嫌われ、クラスに居場所がなくなった時から少し考えていたことでもあった。

簡単な解決策でも、踏み出せない突破口。
学校を辞めるなんて、それこそ将来に関わってしまう。

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