死が二人を分かつとも
クラス中の無視から始まり、電話は着信拒否、SMSもブロックされた。
たった一日でがらりと変わった日常。
無視をしているのに、休み時間は必ず、私の悪口がクラス中に飛び交う。
廊下を歩いていれば、見知らぬ生徒からも好奇と蔑みの目で見られた。
いじめの典型。肉体的でなく、精神的に追い詰められていく毎日が私の日常と化した。
弥代くんの方はどうだろうと思えば、私みたいな無視や陰口はないものの、女子から毎日のようにヒステリック気味に叫ばれているとのこと。
『なんで、あんなのがいいのっ』
見た目も性格も悪い女と付き合う神経を疑う。フラれた人のプライドはズタズタだろう。
それでも弥代くんは、私を庇うのだから、余計に傷付く。
傷付いた人は、何かのせいにしたがる。
何かのせいにして、悲しみを憎しみに変えて紛らわすんだ。
反感は、私へと移る。
私はただ、黙っているしかない。
下を向きながら、過ごすしかなかった。
顔を上げられるときは、休み時間や下校時に弥代くんが来てくれる時だけ。
忌々しくこちらを見つめるみんなに後ろめたさがあるけど、彼の手は気にするなと引っ張ってくれる。
あの、屋上へ。
私たちだけの場所となった空に近い場所へ。
『辛いなら、逃げて良い。俺もついていく』
いつまでも私の味方たる彼に、これ以上迷惑はかけたくなかった。
大丈夫と、答えるしかない。
耐えればいい。精神的に来るものばかりなら、私が強くなればそれで済むことなのだから。
『無理、するな』
我慢するなーー
そう、言われた気がした。
気がするほど、私は、よほど耐えていたらしい。
ストレスという水が、心(器)に亀裂を入れていく。亀裂は彼が補修してくれた。彼と会う度に落ち着くけれども。
水の逃げ場はどこにもないんだ。
見えない心だからこそ、許容量さえも計れない。
大丈夫だと、無理をしていた。
無理をしていたのは、彼も目に見て分かっていたからこそ“助言”する。
『無理をするな』
我慢するな。耐えるの反対。耐え続けた先にあるもの。器を内側から軋ませるほど溜まった水の行く末に待ち受けたことはーー崩壊。
今までの自分が瓦解する鈍い音がした。