死が二人を分かつとも

海底から這い上がった気分。

鮮明になった視界で見たのは、窓の下で、血を流して倒れる真奈。

耳にしたのは、悲鳴。

手は、前に出ている。
誰かを押したような形のままで、止まっている。

「そよ香っ!」

彼の声が目覚まし。
さっきまでのことが夢のように朧気だけど。

「あ、あああぁっ!」

割れた窓ガラスから入り込む風が、私の声と混じり合ったーー


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