いないいないばあ
ほっと胸を撫で下ろして、わたしが部屋

に帰ろうとした時、ジャージ姿の若い男

性がわたしとすれ違うようにして、公園

に走り込んできた。ベビーカーに駆け寄

って、中を覗きこんだその男は安心した

様子で大きく息をつくと、わたしに目を

とめて、ベビーカーを押しながらこちら

に近づいてきた。

「あの…この辺に、他に誰かいませんでしたか?」
男は突然、奇妙な質問を投げかけてきた。わたしが当惑して、男の顔をじっと見つめていると男は頭をかきながら、

「いや…実は、僕この近くのアパートに住んでるんですけど、ちょっと目を離した隙に、この子が部屋から急にいなくなってしまって…ベビーカーも無くなっていたので、慌てて部屋を飛び出したら、なぜかこんなところに」

言い訳するような口調でそんな話をした
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