いないいないばあ
「ご家族の方が、散歩に連れて来られたんじゃないんですか?」

答えながら、わたしがベンチを振り返ると、さっきの女性は姿を消していた。どこにいったんだろう、と思っていると

「それはありません」と男は首を振った
「今夜、部屋にいたのは、僕とこの子のふたりだけだったんですから」

それじゃあ、さっきの女性はいったい


何者だったんだろう、そう思いながら、

「でも、さっきまで白いワンピースを着た女の人が一緒にいましたよ」
わたしが答えると、男の顔から一気に血

の気が引いた。そして、ベンチの方にチ

ラッと目をやると、ぶるぶる震えながら

、逃げるように公園から立ち去っていった。

訳が分からないまま、とにかく部屋に帰

ろうと振り返ったわたしは、びっくりして声にならない悲鳴を上げた。

わたしのすぐ背後に寄り添うようにして、白いワンピースの女性が、さっきと同じ両手で顔を隠した姿勢で立っていたのだ。
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