無題
偶然と必然は紙一重
その日、何故僕等が学校に残っていたのかというと、どうしようもない先輩─E.T先輩のせいだ。名前の通りの変人で、この部活内で絶対の権力を持っている。
本来ならば部活は6時に終わりで、10分後には学校にほとんど生徒がいなくなる状態になるはずなのだ。
そんな中、僕等が30分も待たされる羽目になったのは、先輩のこの一言──「お前ら片付けとけよ。俺ジュース買ってくる。待っとけ」
たかがジュース、されどジュース。先輩の命令は絶対だ。
「先輩が言えば、カラスも白い」──こんな事を言ったのは誰だったろう。昔の偉い人だろうか。
とにかく僕等は、先輩に従うしかないのだ…。
部室には、たった1つの慰めのように小さなテレビがついている。気のせいか先程から不幸なニュースばかり流れている。今も、美人でそこそこ知られているアナウンサーが深刻な顔で、暴力団上川組と大林組のちょっとした抗争がどうのこうのと話している。
「ところで理生」
黙りこくっている部室の雰囲気を変えたいのか、僕等──つまり可哀想な後輩の中の1人だ──の中で一番空気の読めない俊夫が口を開いた。
「E.T先輩、戻ってこないな」
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