愛を欲しがる優しい獣
落ちた衝撃で箱が潰れてしまったものは、買い取ることにして買い物カゴの中に入れた。
結構な数量になったので、痛い出費だがこれも仕方ない。
監督不行き届きだった己の責任だ。
あらかた片付け終わったところで、私は男性に頭を下げた。
「弟がご迷惑をおかけしました」
もちろんひろむにも詫びるように促す。
「お兄さんにごめんなさいとありがとうは?」
「ごめんなさい……。ありがとう」
舌足らずで感謝の意を伝える様子はまだまだ子供で。
私はどうにかしないと、と決意した気持ちが揺らぐのだった。
そう思って油断していると、また懲りずにひろむは猛烈な勢いで走りだした。
「あ、こら!今度はどこ行くの?」
「トイレ!」
(これだから……もう!)
「すいません。落ち着きがなくて」
申し訳なさで再び男性に頭を下げる。
今日の夕飯はひろむが苦手なにんじんづくしにしてやろうと小さな復讐を心に決める。