愛を欲しがる優しい獣

バーを出て大通りまで走ると、流しのタクシーを拾った。

週末のせいか道路が混んでいて、気持ちばかりが急いてしまう。

(何かあったのだろうか……)

結局、佐藤家に到着したのは早苗ちゃんから電話をもらってから1時間ほど経っていた。

俺を玄関ポーチで出迎えてくれたのは佐藤さんでも、早苗ちゃんでもなく。

……櫂くんだった。

「あんた、鈴木?」

何とも言えない疑わし気な視線を受けて、櫂くんにはこちらの格好で会ったことがなかったことを思い出した。

直ぐに来いと指示されたので、着替える余裕などなかったのだ。

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