愛を欲しがる優しい獣
「あ……そうです。鈴木です」
「まあ、いいや。こっち来て」
手招きされて櫂くんについていく。櫂くんは迷わず家の裏手の方に歩いていった。
「なんでこっちから……」
「早苗姉さんに聞けよ。俺は指示されただけだから」
櫂くんは黙って勝手口の扉を開けた。施錠されていなかったのは、おそらく早苗ちゃんの仕業だろう。あくまでも櫂くんは忠実に任務をこなしていく。
「靴脱いで、こっそり上がれよ」
なぜコソコソする必要があるのか、それは勝手口から台所に入ると直ぐに分かった。
……佐藤さんと早苗ちゃんの話し声が聞こえてきたからだ。