愛を欲しがる優しい獣
<君達、3年生?見学に来たの?>
彼はそのゼミに所属する4年生の先輩だった。
教授からの信頼も厚く、誰にでも分け隔てなく親切に接する態度に好感を持った。
憧れの先輩が、恋しい相手に変わるのにそう時間はかからなかった。
「私ね、その人のことがとても好きだったの。だから、お付き合いして下さいって言われた時は、すごく嬉しかった……」
気持ちが通じ合ったことが信じられなくて、何度も彼に本当か確認した。
その度に優しく囁かれる愛のことばに、私は何度も心をときめかせた。
今思えば、付き合いたてのあの頃が一番幸せだったのかもしれない。