愛を欲しがる優しい獣
04話:家路
「ごめんなさい。重いでしょう」
「平気、平気」
ひろむを背負って歩く鈴木くんの腕には私が買った10㎏の米が抱えられていた。
当初は私が抱えていたのだか、よろよろ歩いていたのを見かねて鈴木くんが持ってくれた。
細身に見えたのに意外と力があるのか。
いや、人は見かけによらないということを数分前に体験したではないか。
会社の人間が今の鈴木くんの姿をみても決して営業部の鈴木くんと同一人物だとは思わないだろう。
「弟さんは何歳?」
「幼稚園の年少組」
「元気だね」
「そうね…元気すぎていつも困っちゃう」
もうすっかり日が暮れていた。
鈴木くんに懐いたひろむが別れ際にぐずらなければもっと早く帰れたはずだったのに。
当の本人はおんぶされて気持ちよく夢の国にいるなんてまったく呑気なものだ。
こちらも都合も考えて欲しい。