愛を欲しがる優しい獣
第4章
33話:母親
「お母さん!!」
数年ぶりにあった母親は、実に呑気にお茶を飲んでいた。
「おかえりなさい、亜由。どこに行っていたの?」
さも当たり前のような顔で出迎えるものだから、がっくりと身体から力が抜けていく。
「おかえりじゃないわよ!!突然帰ってきてびっくりするでしょう!!」
「そう?ごめんなさいね」
連絡もなしで帰ってきて、ごめんなさいの一言で済むと思っているのか。
文句を言っても本人がケロリとしているので、謝罪の言葉を聞くのは早々に諦めた。
……いつもそうだ。
こちらが何を言ったところで、最後にはお母さんのペースになっていて、私達は掌の上で転がされているような気分になるのだ。