愛を欲しがる優しい獣
35話:行き先
「ごめんね、鈴木くん。折角来てくれたのに」
「いや、気にしてないよ。香織さんってすごいね」
空調のきいている店内は快適で、逆に肌寒いくらいだった。駅前のコーヒーショップは涼を得ようとしている人でごった返していた。
ふたりでカウンターに並んで座れば、隣の席の人と肩がぶつかりそうになる。
「でも、あの様子だと簡単に中に入れてくれないよね。本当にどうしようか……」
「そうねえ……」
思案にくれていると、ちょうど注文したアイスコーヒーとアイスココアが届いた。
チラリと佐藤さんの方を見てみれば、ココアを美味しそうに喉に流し込んでいた。