愛を欲しがる優しい獣

36話:デート


「うわあ!!すごい!!」

佐藤さんは入口に設置された水槽を見るなり歓声を上げた。

夏休みを謳歌している子供と一緒になってガラスに張り付いて、魚の群れを目で追う様子に思わず笑みがこぼれる。

小型の水槽には数種類の小型の魚が一緒くたになって飼育されており、馴染みのあるものから外国産の珍しいものまで揃えられていた。

「大きな水槽はあっちみたいだよ」

書店で購入したガイドブックに、最大の目玉は国内最大級の大型水槽だと書かれていた。

それを見て、ふたり揃ってここが良いと、記念すべき初デートの場所に選んだのだ。

水族館の売りであるだけに入口付近にひょっこりと現れるはずもない。きっと順路に沿って歩くと出くわすように演出されているのだ。

「待って!もうちょっと!」

佐藤さんはよっぽど気に入ったのか、なかなか小魚の水槽から離れようとしなかった。

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