愛を欲しがる優しい獣
37話:夕立
雨を避けるように木の下に飛び込んだ時には全身ひどい有様になっていた。
「うわ、ビショビショだ」
「私も」
あっという間に空を覆い隠した真黒な雲は、大雨を呼ぶのと同時に雷まで鳴らしだした。
(これは当分帰れないな……)
雨は益々勢いを増していた。道路は既に降雨の許容量を超えていて、排水しきれず浸水していた。
「どうしよう……。お夕飯の支度があるのに」
ハンカチを取り出して身体を拭いている佐藤さんを見れば、額からポタポタと雫が垂れていて。ふいに視線を下にずらしてみると、Tシャツから下着が透けていてぎょっとした。
「佐藤さん、これ着て」
俺は羽織っていたシャツを脱いで、なるべくそちらを見ないように渡した。
飢えた獣にとっては目に毒だった。