愛を欲しがる優しい獣
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「佐藤さん」
みれいゆで特売品を物色していると、肩をトントンと叩かれる。
振り返って声の主を見ると、見慣れた瓶底眼鏡姿の彼が立っていた。
「鈴木くんも買い物?」
「うん。冷蔵庫の中空っぽで」
暑い暑いとTシャツを仰ぐ鈴木くんの持っているカゴの中には、手軽に食べられる菓子パンや惣菜などが入っていて、思わず頭の中で栄養価を計算してしまう。
(栄養が偏っている……)
「うちの家で食べれば良いのに」
「いやあ、さすがにこう毎日お邪魔するのも悪いし」
「菓子パンは食べるのに、うちのご飯は食べられないのね」
さも残念そうに言ってスタスタとレジに向かうと、鈴木くんが慌てて追いかけてくる。
「ごめんなさい!今日もお邪魔します」
「じゃあ、これ持ってレジに並んでね」
特売品のカレールーの箱を鈴木くんに渡す。おひとり様1点限りの特売品だ。
「今夜はカレーよ」