愛を欲しがる優しい獣
45話:本音
「ごめんね、散らかっていて」
「ううん。こっちこそ急に来てごめんなさい」
努力の甲斐あってリビングは佐藤さんに見せても支障ないくらいには片付いていた。
(間に合ってよかった……)
脱ぎっぱなしのスーツ、使いっぱなしのタオル、出しっぱなしのDVDなどの綺麗好きな佐藤さんに見られたら幻滅されそうなものはあらかた寝室の扉の向こうに押し込んだ。
人生何が起こるかわからない。
いつか佐藤さんとこの部屋で過ごす日のことを夢見て、これからは掃除に励むことを固く誓う。
「あっ、もしかしてご飯食べちゃった?」
「ううん、来てくれて助かったよ。食べ物何もなかったんだ」
「良かった。そう言ってもらえると嬉しい。すぐ支度するね。台所、借りて良い?」
「良いよ」
そう答えると、佐藤さんはほとんど物がない台所に入って、鼻歌交じりに己のバッグからタッパーとおにぎりを取り出し始めた。