愛を欲しがる優しい獣
俺の部屋の台所でもテキパキと動いていく佐藤さんはいつもとほとんど変わったところはない。
……きっと彼女も動揺したはずなのに。
こちらの事情を察して家にやってきたことくらい俺にも分かっていた。
「自宅待機のことは誰から聞いたの?」
「佐伯くんよ」
「そっか」
意外と早く知られてしまったな、という感想しか浮かばなかった。
まあ、監査部があれだけ派手に動いていれば他のフロアの社員にだって噂にするだろう。
「大変だったでしょう。力になれることがあったら言ってね」
「別に大変なことなんてないよ。……こんなことには昔から慣れているから」
諦めたような口調で言うと佐藤さんは動いていた手を止めて、俺の傍に寄ってきた。