愛を欲しがる優しい獣
真面目な所は見習うべきだって思っていたし、堅物だからって遠ざけることもしなかった。
たまに奢ってもらう昼食は美味かったし、家族の話を聞くことだって煩わしいと思ったことなどなかった。
だから、余計に……裏切られたと思ったんだ。
他人から便利に扱われるのには慣れていると強がっていても。
こちらが利用したのだと虚勢を張っていても。
親元から離れて初めて一から努力して築いた人間関係が脆くも崩れ去ったことはショックだったのだ。
信じていたからこそ裏切られた時は苦しい。……あの当時はこの痛みの尊さを知ることが出来なかった。