愛を欲しがる優しい獣
「私は鈴木くんを信じているわ」
俺は彼女の抱擁を素直に受け入れた。
「……ごめん」
するりと口から出たのは謝罪の言葉だった。本当にどうかしていた。これはまるで八つ当たりではないか。
「怒っても良いのよ。それは鈴木くんの正当な権利だもの」
(そうか……。俺は怒っていたのかもしれない……)
初めて味わう感情の意味を知ると、ホッとすると同時に情けない気持ちになった。
「ご飯を食べましょう」
佐藤さんは明るい表情で提案した。
「お腹が空いているから、悪いことばかり考えるのよ」
「うん、そうだね」
お腹いっぱいになってから、明日のことは考えれば良い。
……満腹になった時の幸福感は他ならぬ彼女が教えてくれた。