愛を欲しがる優しい獣
「全然良くない!」
佐藤さんはバンッとテーブルを叩いて身を乗り出して、俺を睨んだ。その勢いに押されてソファにのけぞる。
「何で佐藤さんが怒りだすの?」
「だって!絶対におかしいじゃない!」
今にも上層部に直談判しに行きそうな剣幕だった。
ひょっとすると佐藤さんは俺の代わりに怒っているのかもしれない。
……素直な人だ。
そう、俺は彼女のこういう所に惹かれたんだ。
なんだかくすぐったいような、誇らしいような気持ちになる。
「佐藤さん」
俺は興奮している佐藤さんの鼻をむぎゅっとつまんだ。不意を突かれてきょとんとした目で俺を見つめる彼女に向かって、優しく言い聞かせる。
「俺は大丈夫だから」
……きっともう大丈夫だ。
たとえ解雇になったとしても、それを黙って受け入れる。誰も恨んだりしない。
俺の代わりに怒ってくれる佐藤さんがいてくれるから。