愛を欲しがる優しい獣
「幻滅なんてしないわ。鈴木くんはひろむをかばってくれたじゃない」
「そうか…よかった」
鈴木くんは明らかにホッとしたような表情を浮かべて言った。
「じゃあ、また会社で」
「おやすみなさい…」
私はパタンとしまった玄関扉の前でしばしの間立ち尽くしていた。
鈴木くんの誠実さに触れた今となっては、もう誤魔化しきれなかった。
その日はよく眠れなかった。
気が付くとぐるぐると同じセリフが頭の中を回っていて。
“俺、佐藤さんのことが好きなんだけど”
私はようやく、彼に愛を告白されたことを思い出したのだった。