愛を欲しがる優しい獣
48話:恋の処方箋
「あ」
俺と佐藤さんは突然現れた渉の存在に咄嗟に対応できなかった。
「鈴木に、佐藤……?」
誰がどう見たって抱き合っているこの体勢を見れば、ただの同僚だという言い訳が詭弁だと直ぐに分かる。
佐藤さんは俺から慌てて離れた。
「さ、佐伯くん!違うの!これは……その……」
何か言おうとしては口ごもってしまう佐藤さんに、渉は疑わしげな視線を寄越した。
このままだと、非常にまずい。俺はともかく佐藤さんは女性だし、就業中に抱き合っていたなんて言い触らされたら困るだろう。
「渉、昼飯食べたか?」
「まだだけど……」
「たまには外で食べるか。良いだろう?」
時計は丁度、昼の時間を差していた。
「佐藤さんも行こうよ」
「あ、うん。ちょっと待っていて!財布とってくる」