愛を欲しがる優しい獣
「俺も彼女欲しい……」
テーブルに突っ伏して泣き真似までする様子を見かねて、佐藤さんが慰めの言葉を掛ける。
「佐伯くんだってモテるんでしょう?」
「そうだな、鈴木にお近づきになりたい女性陣には常にモテモテだよ」
渉は涼しい顔で蕎麦をすすっていた俺を睨んだ。
「……鈴木と一緒にいると俺の存在が霞むんだよ」
俺は呆れてものが言えなくなった。
(……勝手に人のせいにするなよ)
「ひとりに絞らないからいけないんだよ、渉は」
あっちにもこっちにもアホみたいに愛嬌を振りまいておいて、本命に相手にされないのは一体誰のせいだというのだ。
「だってみんな可愛いじゃん?」
開き直る男ほど始末の悪いものはなかった。
「バカにつける薬はないよ。そう思うよね、佐藤さんも」
「あの……佐伯くん。女性は一途な男性の方が好きだと思うわ……」
俺だけでなく佐藤さんにも否定されて、渉はがっくりと肩を落としたのだった。