愛を欲しがる優しい獣
「鈴木くん……その格好……どうしたの……?」
私は口をあんぐりと開けたまま尋ねた。
どうしたもこうしたも、普通に服を着て立っているだけなのだが、てっきりいつもの姿でやってくるものだと思っていたせいで現実を受け入れられそうにない。
「おかしい?」
そう尋ねられて、私は無言で首を横に振った。
変なわけあるだろうか。逆に似合いすぎていて怖いくらいだ。
こんなことなら普段着ではなく、もっとおしゃれをしてくるのだった。
とてもじゃないが、今の鈴木くんの隣に立つ自信が持てない。
「行こうか」
鈴木くんはこちらの気持ちを知ってか知らずか、私の手を引っ張って駅の構内へと歩き出した。