愛を欲しがる優しい獣
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「すいません。鈴木くんいますか?」
鈴木くんの所属する営業部がどよりとざわめいたのは言うまでもない。
今まで鈴木くんを白昼堂々と名指しで呼び出す強者はいなかったのだろうか。
皆、昼食を食べる手を止めひそひそと小声で話し始めた。
(平常心、平常心)
これは仕方がないことだと自分に言い聞かせる。
携帯の番号などは知らないから、直接尋ねるしかない。
戦隊もののムック本の持ち主が鈴木くんのはずはないが、万が一ということもある。
(まさかね…)
脇に抱えた“地球防衛隊セカイジャー”がガサリと音を立てて存在を主張する。
「佐藤さん」
そう呼ばれて顔をあげると、昨夜とは全く別人の鈴木くんが立っていた。