愛を欲しがる優しい獣
「……あの女性は、あなたがどなたのご子息かご存知なのですか?」
……まるで佐藤さんが無知であることを責めているような言い方だった。
「あんまり俺を怒らせないでくれる?」
僅かに怒りを滲ませて言うと、小林さんが怯んだのが分かった。
俺が誰の息子か知らないからどうだというのだ。
確かに彼女は何も知らない。それは、俺が何も言わないからだ。
彼女を貶めるなんて見当違いも甚だしい。あまりのバカバカしさに、酷薄な笑みが浮かぶ。
「あんまり怒らせると、また親父のネタを週刊誌に売っちゃうよ?」
これは効果覿面だった。小林さんの顔が見る見るうちに青ざめた。
「お戯れをおっしゃるのは辞めてください」
「本気だよ」
……佐藤さんを守るためなら鬼にでも悪魔にでもなれた。