愛を欲しがる優しい獣

「ごめんね。遅くなって!」

家の中に招き入れると、鈴木くんは慌ただしく靴を脱ぎ出した。

「もしかして、もう始めちゃった?」

「ううん、まだよ」

私は首を横に振った。

「卓上コンロのガスを切らしちゃって。今、買いに行ってもらっているところなの」

いつもと変わらぬ瓶底眼鏡とよれよれのTシャツ姿を見て少しだけ安心する。

「俺も何か手伝おうか」

「じゃあ、お皿並べてくれる?」

カーペットの上にブロックを並べて遊んでいたひろむが鈴木くんの脚にしがみつきながら言った。

「僕もやる!」

勝手知ったる他人の家よろしく、食器棚から人数分の取り皿とコップを取り出すと各々の持ち主の定位置に並べ始めた。

ひろむは落としても大丈夫なように箸と箸置き担当だ。

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