愛を欲しがる優しい獣
「佐藤」
物思いにふけっていて完全に思考をストップさせていた私を、コピー室の外から呼んだのは佐伯くんだった。
慌てて鈴木くんの写真を伏せて、平静を装って尋ねる。
「どうしたの?」
「鈴木と喧嘩でもしたのか?」
佐伯くんは困ったように頭を掻いた。
「この間からずーっと不機嫌なんだけど、あいつ」
……何も言えなかった。
心当たりなら山ほどあった。あの時、鈴木くんはずっと静かに怒っていた。勝手に“お別れ”を切り出した私に対して。
「私がいけないのよ。勝手なことばかり言ったから……」
佐伯くんは私の言葉を聞くと深いため息をついた。
「佐藤、今日の帰りって時間ある?」
「え?」
「飲みに行こうぜ」
佐伯くんはそう言って、私の頭をポンッと軽く叩いた。