愛を欲しがる優しい獣
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「ここ?」
「そう、ここ」
佐伯くんが連れてきてくれたのは小洒落たバーでもなく、シックなレストランでもなく、サラリーマンが好んで立ち寄りそうな焼鳥屋だった。
のれんをくぐると生きの良い店主の声が店内に響く。
カウンターの一角に陣取ると、早速店員が注文を取りにやって来た。
「俺はビール」
「私はウーロン茶で」
肝心のメニューの選択は行きつけである佐伯くんに任せると、コートを脱いで背もたれに掛ける。
「ねぎまが凄く上手いんだ」
「そうなんだ?」
ほどなくして運ばれてきたねぎまは佐伯くんの言う通り絶品だった。
「本当、美味しい……」
店主が褒められたのに気を良くして、串を一本サービスしてくれる。
そちらもまた絶品で空腹の胃は満足げに膨れていく。
「で?どうやって佐藤はどうやって鈴木を怒らせたの?」
私は串を皿に置くと佐伯くんに洗いざらい事の次第をぶちまけた。
……行き場のないこのもやもやとした気持ちを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。