愛を欲しがる優しい獣
「なるほどねえ」
話を聞き終えると佐伯くんはビールのグラスを静かにカウンターに置いた。
「それは、鈴木が気の毒だな」
佐伯くんの率直な感想に私の心がズキリと痛む。
私がいけないということは承知していたが、他人から断言されると余計に辛かった。
佐伯君はカウンターに頬杖をついてしみじみと言った。
「鈴木が佐藤のことが好きなのは俺の目から見ても明らかだよ。それがどうして、当の本人に伝わらないのかねえ……。それとも、分かりたくない理由でもあるのか?」
「理由なんて……」
理由を問われて戸惑ってしまう。
鈴木くんの気持ちは知っているつもりだった。だからこそ、離れなければと思ったのだ。
……たとえやり方が間違っていたとしても。
けれど、ここにきて急に分からなくなってくる。
(私がしたことは本当に正しかったの……?)