愛を欲しがる優しい獣
「鈴木の奴、今日は関谷さんと食事に行くって言って帰って行ったよ」
告げられたのは予想外の事実だった。
(鈴木くんと関谷さんが……?)
寄り添うふたりを想像すると、ウーロン茶のグラスを持つ手が震えた。
鈴木くんは、関谷さんにも優しく笑いかけるのだろうか。
そして、私にしたように熱い口づけを交わすのだろうか。
「とにかく、早く仲直りしろよ」
佐伯くんは慰めるように、伝票が挟まっているバインダーで私の頭を小突いた。
……何だか今にも泣き出してしまいそうだった。
もう、そんな資格はないのに。
「今日は俺の奢りだから」
そう言うと、佐伯君は人差し指と中指に挟んだ伝票をひらひらと揺らしながらレジへと向かったのだった。