愛を欲しがる優しい獣
私は急に不安になった。
知らず知らずの内に営業部に迷惑をかけるようなミスでもしただろうか。
心当たりこそないが普段からのんびりしていると先輩社員から指摘されているだけに、うっかり何かとんでもないことをしでかしてしまったのかもしれない。
恐る恐る鈴木くんの顔を見上げる。
鈴木くんは私と目が合うと少し照れたように告げた。
「今晩、食事でもどうかと思って……」
私は思わずひゃっと小さく悲鳴を上げた。
(食事?夕飯?今夜?なんで?私と?)
一気にさまざまな単語が頭の中を駆け巡る。
持っていた書類の束を思わず落としそうになって慌てて抱え直す。
上司から他部署に持っていくように頼まれていたことをようやく思い出した。
けれど今はそれどころではない。
鈴木くんが私を食事に誘うなんて天地がひっくり返ったとしてもありえない。
何かの冗談だろうか。