愛を欲しがる優しい獣
鈴木くんは私の冷え切った手から鍵を受け取って、代わりに鍵穴に押し込んだ。
手首をひねれば簡単に開いてしまう。
「だから、本当の望みを言ってよ」
(本当の望み?)
そんなの私にだって分からない。今まで私の望みなんて誰も聞いてくれなかった。
「私……」
……なんて空っぽなんだろう。
絶望すら感じていると、そっと額にキスを落とされる。
「もう、家には行かない」
……彼はかつての宣言通り、最後まで私を責めなかった。
いっそのこと、詰ってくれれば良かったのに。
頬を伝う涙を拭ってくれる人はもういない。
どんなに願っても鈴木くんは戻ってはこなかった。