愛を欲しがる優しい獣
62話:椿の助言
鈴木くんが我が家に訪れなくなってから、会社で関谷さんと楽しそうに会話しているのを見る機会が増えた。
社内の女性陣は彼女なら仕方ないと既に傍観の体制に入っている。
美男美女カップルでお似合いだと周囲からも好意的に受け止められるのを見ていると、もう私の出る幕はないのだなと感じる。
「お似合いだね……。あのふたり」
パスタランチを突きながら椿が呟く。今日のパスタは辛さ控えめのアラビアータだった。
私は自身の弁当に目をやった。箸は一向に進んでいない。
視界の端に映る鈴木くんと関谷さんの会話の内容が気になっているからだ。
関谷さんの瞳はキラキラと輝いていて、恋する乙女そのものだった。
相槌を打つ鈴木くんの表情はここからだとよく見えなかった。