愛を欲しがる優しい獣
そうやって盗み見していることに気が付かないような椿ではなかった。
「亜由はもう良いの?」
椿はパスタランチを口に運びながら問いかけた。
「なんで、私に聞くの?」
曖昧に笑って誤魔化そうとした私の耳にとんでもない台詞が飛び込んでくる。
「だって、亜由と鈴木くんって付き合っていたんでしょう?」
「椿……」
……心臓が止まるかと思った。
椿には鈴木くんと付き合っていることを隠していたはずだからだ。
私は思わずテーブルに身を乗り出して言った。
「ごめんね……!!私……」
弁解と謝罪の言葉を口に出そうとすると、椿が宥めるようにして続きを止めた。
「良いの、良いの。気を遣わなくって。亜由が黙っていた気持ちもわかるし。あんな人気者と付き合っていることがばれたら大変だもんね」
座ったら?と淡々と言われて私はようやく落ち着いて腰を下ろした。