愛を欲しがる優しい獣
関谷さんから小さくすすり泣くような声が聞こえた。
「……私が佐藤先輩に勝てるわけないじゃないですか」
ハンカチを取り出してさめざめと涙を零す様子に胸が痛む。
「一緒に食事をしていても鈴木さんは一度も私のことを見てくれなかった……」
(罪な男ね)
……こんな美女を袖にするなんて。
私も同罪だった。
関谷さんの傷が深いのは私がフラフラと彼の気持ちから逃げていたからだろう。
「私、まだ鈴木さんが好きです」
「負けないわ」
諦めて、なんて勝手なことは言えない。
私も努力をするべきだ。鈴木くんに愛されるための。
「だって、関谷さんはセカイジャーのテーマソングなんて歌えないでしょう?」
……努力の方向性は関谷さんには内緒だ。