愛を欲しがる優しい獣
「おいしい?」
「うん、美味しいよ」
ごちそうさまとスプーンを置いた食器を見れば、すべて空になっていて安心した。
鈴木くんは何を食卓に出しても完食してくれる。好き嫌いの多い子供たちに見習わせたいくらいだ。
(そうだ、たまには鈴木くんの好きなものでも作ろう)
「鈴木くんって、好きな食べ物ってなにかある?」
「佐藤さんが作るものは何でも美味しいよ」
「ありがとう……」
出鼻をくじかれたような気もするが、褒められて悪い気はしなかった。
「じゃあ、苦手な食べ物は?」
鈴木くんは珍しく口ごもった。
「アーティチョーク、どうしてもあの見た目がダメで……」
(アーティチョーク……?)
「そんな食材、みれいゆには売ってないから安心して」
売っていたところで絶対に買わないだろう。