愛を欲しがる優しい獣
「すみません。今晩はちょっと…」
「じゃあ、明日は…?」
「明日もちょっと…」
「じゃあ、明後日は…?」
「明後日もちょっと…」
ここら辺で鈴木くんが目に見えて落胆していった。
断ったこちらが居たたまれない気持ちになってしまう。
都合が悪いのは事実なのだから。
「ごめんなさい……。書類を届けるように言われているの」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると、鈴木くんが食い下がるように私の腕を引いた。
そして、私は彼の口から紡ぎだされた言葉に驚愕するのだった。
「俺、佐藤さんのことが好きなんだけど」
(へ?)
一瞬、時が止まったような気がした。
鈴木くんの台詞が耳に届くまで1秒。脳に響くまで1秒を要した。
何事かと気が付いた時には私の頬は真っ赤に染まっていた。
「ご…ごめんなさい!!」
私はそう叫んで廊下を走り出していたのだった。
ああ…今日はなんて厄日だ。