愛を欲しがる優しい獣
第2章
11話:もやもや①
「最近、楽しそうだね」
「え、そう?」
「うん、すっごく楽しそう」
同僚の椿の言葉に思い当たる節がないわけではない。
ここ数週間で変わったことといえば、鈴木くんが家に遊びに来るようになったことぐらいか。
連絡先を交換してから数日おきに、鈴木くんからメールが届くようになった。
“今日、行っても大丈夫?”
鈴木くんから届くメールは絵文字も顔文字もなく、決まって短い文章だった。
(大丈夫だよ…、今日の夕飯は親子丼ですっと…)
こちらから返すメールも同様の素っ気なさである。
「いつも誰とメールしているの」
「あ……。ともだち……?」
「なーんだ。てっきり彼氏なのかと思った」
椿は至極残念そうにそう言うと、自分だけさっさと着替えて更衣室から出て行った。