愛を欲しがる優しい獣
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「はい、お土産」
手渡されたスーパーのレジ袋を開いてみると家族分のアイスがぎっしり入っていた。
「買ってこなくてもいいのに」
「だってみんな喜ぶから。はい、佐藤さんにはイチゴ味」
ふいに口に入れられた棒アイスは冷たくて、舌どころか思考まで麻痺させる。
(おいしい……)
シャリッとアイスをかじれば甘酸っぱいイチゴの味がした。
「皆の衆、鈴木が来たぞー!!」
樹の号令で皆がアイスに群がる。
その様子を遠巻きに見ていると、鈴木くんが声をかけてくれた。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
あまり考えすぎない方が良いのかもしれない。
この空間を愛おしいと思う限り、疑問を持ってはいけないのだ。