愛を欲しがる優しい獣
18話:羊の皮
「あれ…鈴木くん……?」
最寄り駅の改札の前で待つこと約10分。彼女はほどなくして現れた。
「迎えにきたよ」
思いもよらない人物が登場したせいで佐藤さんは驚いているようだった。
「いつ出張から帰ってきたの?」
「つい、さっき」
帰ろう、と促すと、彼女は覚束ない足取りで歩き出した。
段差につまずきそうになったところで咄嗟に腕を掴むと、佐藤さんの身体から仄かにアルコールの匂いがした。
「もしかしてけっこう酔ってる?」
「ううん……そんなことないよ……」
佐藤さんは否定していたがよくよく見てみれば、頬は赤く染まり、呼吸も浅く、目はトロンとしていて焦点が定まっていなかった。
泥酔とは言えないが、決して素面と言い切ることもできない。