愛を欲しがる優しい獣
「うう……ん。よく分かんなかった緊張していたからかな……」
そう言うと、佐藤さんは瓶底眼鏡を付けた俺の顔を見て微笑んだ。
「鈴木くんとご飯食べているほうが楽しいや……」
「あ……ありがとう」
俺はもう佐藤さんの顔を見ることが出来なくなってしまった。
(このひとはどうしてそう可愛いことを言うんだ……)
本当はこのまま部屋に連れ込んで朝まで一緒にいたいとか。
思い切り抱きしめて、他の男なんかに目が行かないようにしたいとか。
時々、顔を出す飢えた獣のような思考を彼女はまだ知らない。
いいや、まだ知らなくていい。
羊の皮を被るのは得意じゃないけれど。
もう少しだけ。
……ただの友達のままで。