愛を欲しがる優しい獣
「この問題わかる?」
問題集から適当な問題を指定する。
鈴木はしばらく数式とにらめっこすると、スーパーのチラシの裏に答えをすらすらと書き終えた。
解答をめくってみれば、解法から計算式までほぼ正解だった。
姉さんからこの話を聞いた時は冗談じゃないかと疑ったが、この様子なら間違いないのだろう。
ただのオタクに見えたけれど侮れない。私は鈴木に対する認識を改めたのだった。
「ねえ、私に勉強を教える気ない?」
「え?」
もっと上の大学に行くためにはどうしても誰かの力が必要だった。
塾に通えれば一番良いのだけれど、それだと時間の融通は利かないしお金も必要だ。
利用できるものはとことん利用する。
7人も姉弟がいるとよくわかる。
本当に欲しいものは無理やりにでも掴み取らなければ消えてなくなってしまうということが。