愛を欲しがる優しい獣
「真面目なんだね」
「別に。そんなんじゃないわ」
「いいよ。あんまり優秀な教師とは言えないけど」
鈴木は問題集を閉じると、テーブルに置いた参考書の山の上に返した。
参考書に貼られた付箋の数を見られたような気がして、急に恥ずかしくなる。
努力している所なんて、出来れば隠しておきたかった。だって必死になっている姿なんて、格好悪いではないか。
そんな心情すら見透かされたような気がして、なんだか癪に障った。
「私に恩を売っておけば後々有利に働くわよ」
小声で囁くと、鈴木がごくりと息を呑んだ。
そう、これは交換条件なのだ。一方的に与えられるだけの関係はこちらだって望んでいない。
「姉さんの下着の色とか、教えましょうか」
「それはいいよ……」
「冗談よ」
ヘタレの男の背中を押すのはどうやら私の役目になりそうだ。