愛を欲しがる優しい獣
「なに?そんなことでいいの?まあ、あいつの持ち物見ていると、濃い青とか緑とかが多いけど……」
(濃い青と緑…)
頭の中でもう一度忘れないように復唱する。
「教えてくれてありがとう。助かっちゃった」
最初は呆れていた佐伯くんだったが、最後にはきちんと答えてくれた。この几帳面さが女性社員に声をかけられる理由のひとつだろう。
私は佐伯くんと別れると、終業時刻を待ってデパートへと繰り出したのだった。