愛を欲しがる優しい獣
25話:嫉妬と戸惑い
「新幹線のチケット取れたか?」
外回りから戻った渉に尋ねると、胸ポケットからおもむろにチケットを取り出した。
「何とか取れたよ」
「よく取れたな」
驚きながら渉からチケットを受け取る。
出掛ける前に総務部に寄って直接頼んでくると言っていたが、飛行機の欠航が発表されてから数時間で振替の手配が済むと思ってなかったのだ。
「マジで助かった。これから渡辺じゃなくて、佐藤に頼もうかな。手際も良かったし」
(佐藤……?)
なんだか嫌な予感がした。営業の鈴木とおなじように総務部の佐藤も複数人いたはずだが、俺が真っ先に頭に思い浮かべたのは彼女だった。