愛を欲しがる優しい獣

(どうかしている……)

一瞬、ここが会社だということを忘れて渉に殴りかかってしまうところだった。

俺の方が渉の何倍も、いや何十倍も彼女のことを知っている。

絶対に渡さない、と内なる獣が再び顔を出したのだった。

……これは嫉妬だ。

佐藤さんと容易く距離を埋めた渉への嫉妬だ。

俺は自信がないのだ。

万が一にでも渉に心が動いたら。他の男の元に行ってしまったら。

そう考えると、怖くてたまらないのだ。

俺はどうしたらいいのだろう?

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