愛を欲しがる優しい獣
26話:ひとりの夜
花火大会の当日は快晴だった。
昨日の台風は温帯低気圧へと変わり雨雲はどこへ行ったのやら、澄み渡るような青空が広がっていた。
私は休日だというのに朝から全員の浴衣と小物を用意して大忙しだった。
夕方になって全員の着付けが終わる頃にはくたくたに疲れ果てていた。
「姉ちゃん、本当に行かないの?」
「うん、人ごみって苦手だし。たまにはゆっくり本でも読むわ」
お土産買ってくるねと、はしゃぐひろむと双子を樹に任せ、私は玄関で4人を見送った。
樹達を送り出すと、家に残ったのはとうとう私ひとりきりになってしまった。
(静かだわ……)
家族全員が出掛けてしまうと、いつもは騒がしい我が家が一気に静まり返る。